[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
この想いは、この関係は、多分、誰にも理解されない。
「あぁ、それ去年の。また見てるんだ」
「うん、これ面白い」
後ろからまわされた腕。ずるい、同じ人間なのに、どうしてこんなに違うんだろう。身長とか。身長とか身長とか身長とか。腕も細い。二の腕。ずるい。運動しなさいって、それが無理。ふふん、どうせわがままですよーだ。
「あれ、見てたのはストーリー?」
なんて、わかってるくせに。哀愁なんて滲ませて、やっぱり演技は上手。悔しいな。でもやっぱりそんなところにまでやられてる。
抱きしめてくれる、その腕が好きです。なんて、とてもじゃないけど言えない。恥ずかしい、さすがに。
「もっといいの、いっぱいあるのに」
「知ってるよ?」
「こっち向いて」
腕を緩められる。ずるい。やっぱりずるい。無理やりにしてくれたら、拒まないのに。わかってるくせに、こういうの、得意じゃないって。
「嫌?」
「も、うぅ」
わかってます、どうせ弱いの、あなたには。お願い、なんてそんな声で言われたら。きっとあなたは分かってる、仕方ないなって私が思うこと。結局私はマリオネット。あなたの腕の中で踊る。
逆でしょ、なんて。
本当に?だったらちょっと、嬉しい。だってほら、対等だってわかるから。
「は?」
にこりと笑う彼女に、俺はただ口を開けて間抜け面をさらすことしかできなかった。
「だからね? ちょっとパリまで」
「いやパリまでじゃなくて」
思わず声すら遮って、みたけれど。それ以上の言葉は出てこなかった。彼女は不思議そうに首をかしげている。呑気にかわいいなぁとか思っている場合ではなく。
「なんで、ちょっと、で、パリまで、なわけ?」
「なんでって言われても……なんとなく」
心なしか頭が痛くなってきた。確かに彼女は時折突拍子もないことを言い出す。しかも、しっかりちゃっかり実行する。こういうときの集中力は半端ない。もっと他のことに使えばいいのに。まあ無理だと思うが。
「まさかとは思うけど、ひとりで行こうなんて考えてないよな?」
「まっさかぁ」
めちゃくちゃいい笑顔だ。それはもう。それにしても、裏切られなかったことには安堵するものの、なんだろう、この敗北感。とかひとりで考えていると。
「行ってくれるよね?」
「……え?」
「一緒に。ねっ?」
……思考停止。
「けーくん?」
俺か!
「ねー行こうよーパリぃー」
さぁ、俺はどうすべきか。いや、どうなるのか。どう、なっているのか。俺の、すぐ傍の未来、は。
~・~*~・~*~・~・~*~・~*・~・~
なんとなく書いてみた。誰だけーくんって。
別にパリに行きたいわけではないです(笑)どっちかっていうとアイルランド行きたい。